11月からの医療危機

コロナ感染の検査法は、理解するために基礎知識がいくらか必要なので難しかったかと思います。

簡単に短く復習しておきます。

 

鼻粘液・唾液で検査するのが、PCRと抗原検査です。

現在、感染しているのかどうかの判定に使います。

PCRの精度は、原理的には100%なのですが、色んな理由があって実際には70%程度の精度に留まります。

見逃しがあるし、逆にすでに感染性がなくなっていても陽性にでることがあります。

 

抗原検査は、便利ですが精度が不明なので、陰性の場合は、念のためにPCRで再確認をすることになっています。

感染判定には、補助的な役割しか果たせていません。

 

抗体検査は、血液検査です。数滴の血液で検査ができます。

過去に感染があったかどうかを判定できます。

数十種類の判定キットが販売されていますが、精度にバラツキがあるので、信頼性が乏しいのが現状です。

(研究用として販売されています。医療用ではありません。)

感染がどれぐらい広がっているかを調査する目的でつかわれているだけで、

皆さんが抗体検査を受ける意義は小さいです。

 

話は変わって、スウェーデンとインドの感染状況について興味深いことを解説します。

 

スウェーデンは、EUで唯一、緩やかな規制しかしなかった国です。

学校はずっと授業を続けており、飲食店も通常通りの営業を続けました。

50人以上に大規模のみが禁止されていてだけで、市民は通常通りの生活を続けました。

 

一方で、EU各国は、3月から強力な規制をともなうロックダウンを実施しました。

それから半年が経過したので、比較ができる状況になってきました。

結論から話すと、ロックダウンの有無で差はなかったような結果になりました。

人口1000万人のスウェーデンの感染者数は8.5万人、死亡者5700人でした。

死亡者の9割は介護施設での高齢者でした。

今は、感染者の増加も落ち着いてきて、あまり増えていません。

 

ロックダウンを実施したドイツ(8300万人)、フランス(6700万人)、イギリス(6700万人)、イタリア(6000万人)、スペイン(4700万人)の各国の感染者数は25〜35万人でした。

感染者率から考えるとスウェーデンと大きく変わりませんでした。

死亡者数の人口比・割合も差はありませんでした。

ロックダウンの意味は何だったのかを考えるには、とても大事な事実です。

パンデミックはまだ終息していないので、この結果からすぐに何かの結論を出すのは難しいです。

どう考えるのかは、信念・経験によって違うと思います。

 

各国の詳しい感染者数と死亡者数は、ジョンズポプキンス大学が毎日集計して公表しています。

興味のある方は、「ジョンズポプキンス コロナ」で検索をしてください。

世界213か国のデータがリアルで知ることができます。

なぜか日本は含まれていません。日本の数値が信用されていないからかも・・・・

 

次は、インドの西海岸の巨大都市ムンバイで実施された抗体検査の結果です。

インドでは、経済を優先して、5月には規制を大幅に緩めています。

感染拡大は、毎日10万人近い増加が続いています。

すでに300万人に達して、近々ブラジルを追い抜いて感染者数第2位になる見込みです。

 

ムンバイは人口2000万人の巨大都市です。

スラムと呼ばれる超貧困者が密集して生活をしている地域があることでも有名です。

スラムでの抗体陽性者は、何と57%に達していました。

死亡者はほとんど出ていません。

1室に10人が共同生活するような超過密状態なので、感染が深く広く進んだと思われます。

この数値の高さは、すでに集団免疫を獲得していると言えます。

感染終息が間近になります。

数字が正しければ、世界で初の集団免疫が確認にされたことになります。

 

一方、ムンバイでも、リッチな人が生活する地域では、抗体陽性者は16%に留まりました。

まだまだ感染拡大が続くという数字でした。

密集すると感染拡大が急速に進むことを意味しているようです。

 

以上の情報から何を読み取り、どう考えるのかは議論の余地があります。

私たちの未来を考えるうえで、一石を投じる事実だと私は思います。

 

さて、今回のお話は、11月以降に医療危機が訪れるかもしれないというテーマです。

お分かりだと思いますが、インフルエンザが流行する時期になるのです。

 

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第12話 コロナ感染(11月からの医療危機)

 

1/28にコロナ感染症が指定感染症と決められた時から、コロナ騒動が始まりました。

冬から始まり、夏を迎えて、まもなく秋になります。

早いものだと感じています。

秋になると新たな医療危機が起こる恐れがあります。

今回は、その危機「11月からの医療危機」についての未来予測の話を提供します。

 

毎年、11月になるとインフルエンザの流行が始まります。

5000万人の人がワクチンを接種していますが、それでも大流行してきました。

それを当たり前のようにとらえてきたと思います。

 

コロナ感染は、夏でも盛んに感染を広げているようですので、秋から冬にかけても

同じ傾向が続くとみられています。

インフルエンザもコロナ感染症も、呼吸器感染症で、初期症状では区別は難しいです。

11月には、よく似た症状の2つの感染症が混在して流行することになります。

 

例年でも、インフルエンザとそれ以外のウイルスによる風邪が混在してきましたが、

医療現場で特に困ることはありませんでした。

検査をしてインフルであってもなくても、取扱いに特別な区別をする必要はなかったからです。

 

一方、インフルとコロナは、法律的に取扱いが異なっている(2類感染症)ので、医療現場に大きな負担が生じています。

防護服を着て、マスク・ゴーグルをかけ、待合室も別にして、他の患者さんとの接触経路を別々にしないといけないなど、大変です。

 

ここで、第6話:感染症法の復習をします。

コロナは指定感染症になっているので、2類感染症の取扱いが義務付けられます。

感染が判明したら、入院・隔離が強制されます。

一方、インフルは5類感染症となっているので、自己管理をするだけになります。

職場からは、休めと言われるかもしれませんが、法律に基づく強制ではありません。

 

話をもとに戻します。

皆さんが医療機関の立場になってイメージをしてください。

発熱患者さんが来院しました。検査をすることになります。

まずは、インフルの検査をします。10分程度で結果がその場でわかります。

インフルが陰性ならば、コロナの検査をすることになるのでしょう。(初めての経験です)

コロナのPCRの結果がわかるのは数日後です。(今の検査状況と同じとします。)

結果が判明するまでの数日間はどうすればいいのでしょうか?

今でも、この期間をどう取り扱うのかは、大きな混乱があります。

職場・学校などは、どう対応したいらいいのか困惑するでしょうか?

医師は、結果が出るまでは自宅安静にしておいてくださいとしか言いようがないです。

ここまでは、容易に頭でイメージができると思います。

 

実は、医療機関もとても困る立場になるのです。

発熱外来などの特別な設備を備えていない小さな医療機関(この先は、医院と呼びます)

では、大した防備もせずに発熱患者さんの対応を迫られます。

数日後に、コロナ感染が明らかになったら、医院のスタッフたちは濃厚接触者となり、自分たちも検査を強いられます。 

検査結果は、さらに数日後です。

それまでの間、医院は臨時休業を余儀なくされます。

 

4月ごろに、いくつかの病院が自主的に診療中止をしたことが報道されました。

11月からは、たくさんの内科・小児科医院が、このような事態に巻き込まれるおそれがあります。

 

医院は、自分たちを守りつつ、患者さんの診療を続けるには、どのような対応をとればいいのでしょうか?

発熱患者は、「一切お断り」とするのが、身を守るためには、最もいいでしょう。

多くの医院がそんな対応を選べば、ちょっとした発熱でも、コロナ発熱外来に殺到することになります。

発熱外来は、大混雑になり、感染拡大の場になってしまうかもしれません。

 

「一切お断り」の方針を取った医院は、収入が減って倒産・閉院の危機に陥ります。

4月には、15%程度の医院が、50%の収入減になって国への補助金の申請をしています。

秋からは、この補助金制度もなくなります。

このように患者さん、医院、発熱外来、いずれもが困難を抱えてしまいます。

 

ここで、選択肢があります。

秋を迎えて、新コロナでの重症者・死亡者が少ない状況が続けば、新コロナを指定感染症から解除する選択肢です。

解除して、5類感染症としたならば、インフルと同じ扱いができるようになります。

国と保健所が、市民生活に強制的に介入してくることがなくなります。

PCRでコロナ感染と判明しても、自己管理で、自宅で自粛をすることになります。

例年、インフルでやっているので、皆さんは自分でできるでしょう。

もちろん、症状が重くなってきた場合は、入院治療に入るのは、今と同じです。

 

秋になっても、依然としてコロナの脅威が大きいという判断・方針が続けば、

2類感染症として、今の窮屈な生活を続けることになります。

インフルとコロナの混合流行になると発熱患者さんは、著しく増えるかもしれません。

今の体制で、対応できるのでしょうか?

 

第1波の流行時は、シンプルでした。

インフルが、1月中旬には、一気に減りました。

こんな体験は、医師として、初めてでした。

そのため、インフルとコロナを区別する必要がなく、発熱患者はすべてコロナ疑いというシンプルな取り扱いで対処ができました。

 

もう一度、繰り返しますが、秋からインフルとコロナの両方の疑いを持って患者さんに対応しなければならなくなります。

とんでもない数の患者さんが、混乱を起こしてしまうかもしれません。

私は、それをとても心配しています。

 

明るい話題としてウイルス干渉説という仮説を紹介して、終わりとします。

2種類以上のウイルスが同時に大流行しないという仮説です。

なぜそのようなことが起こるのかについて証明はできていませんが、事実としては、過去にしばしばありました。

 

インフルエンザを例にとります。

11月から2月ぐらいは、A型インフルが猛威を振るいます。

2月から3月にかけては、ほとんどがB型インフルになってきます。

主役が交代するのです。

ただし、それがはっきりとしない年もありました。

 

新コロナが秋以降の流行が続いていれば、インフルはあまり流行しないかもしれません。

インフルが例年通りの威力を発揮すれば、新コロナは駆逐されて、自然終息が早まるかもしれません。

ウイルス交代が起こるのかどうか? 

感染症専門家は、声には出さないけれど、興味深々だと思います。

 

7月には、ワクチンの第3段階の治験が始まり、ワクチンの完成が見えてきました。

今冬の予防接種は、3つの選択肢があり得ます。

インフルのみ、コロナのみ、インフル・コロナの両方の3つです。

コロナワクチンの安全性・有効性には不安が残ったまま実施開始時期が決まり、

費用の負担など、はっきりしない部分が多くあるので、悩ましいことになります。

 

私は、インフルがコロナを駆逐してくれることを期待しています。

インフルだったら、私も皆さんも扱いに慣れています。

今のように、コロナに対する異常な感情が支配する社会は、元に戻ってほしいです。

コロナ患者は、犯罪者とみなされ、田舎では家族もろとも村八分になると聞いています。

全国津々浦々で、ソーシャルディスタンス、消毒などで、多大な費用と時間・労力を負担が強いられています。

 

今まで敵であったインフルが、今年はコロナ退治の強い味方になってくれるかもしれません。