コロナを振り返って

第13話 コロナを振り返って

 

コロナ感染が始まって8カ月がすぎました。

私を含めて、多くの人うんざりしていると思います。

ここまで事態が深刻になるとは思いませんでした。

病気そのものより、社会・経済の傷みが激しいです。

今までの生活ができなくなり困窮しているひとも無視できない数になりました。

まさに、戦争並みの影響に社会が疲弊しています。

これでは、社会の方が、先に参ってしまうという認識も広まってきました。

 

12回に渡って、新コロナ感染を理解するための基礎知識を提供してきました。

きっかけは、知人からの質問があったことです。これに答える形で始まりました。

最初から、12回の構想があって書き始めたものではないので、内容に重複があります。

TVの報道が、あまりに悲惨なことだけを煽りすぎて、恐怖心を与えるだけで、基本的なことを伝えていないと感じたことも、書き始めた動機のひとつです。

正しく理解して、正しく考えて、正しく怖がろうというのが目的の一つです。

部分的にでも読んでいただいた方の役に立ってくれていれば、私の労力は報われます。

 

医師として私が皆さんに伝えたいことは、全12回で、ほぼ語り尽くしました。

皆さんとしては、すでに知っていることもあったでしょうし、理解しづらいところもあったと思います。

もう一度、今までの内容を整理して、今後を考えるために知識の復習をしましょう。

それぞれは、大事な要点だけに絞ります。

詳しくはすでにお送りした産業医通信を読み直してください。

 

 

病気の脅威

感染力がとても強かったので、瞬く間に感染は広く拡大してパンデミックとなりました。

2009年の新型インフルエンザ以来のパンデミックです。

2019年の暮れには、まさかこんなことが年明けから起こるなどと思いませんでした。

未知の感染症であった新コロナ(COVID19)も、感染発生から半年が経過すると、色々なことがわかってきました。

病気としての脅威を、冷静に客観的に考えられるだけの情報もたまってきました。

感染確認者数は、全世界でまもなく3000万人になります。

死亡者は、100万人を超えそうです。

幸いにも、日本では、感染者は10万人をはるかに下回ります。

死亡者も、1000人を超えたところからは、ゆっくりとしか増えていません。

 

 

新コロナの脅威を・怖さを、同じような感染症を比較するとわかりやすくなります。

そうです! インフルエンザと比較するのが、いいでしょう。

 

日本において、インフルエンザは毎年流行して、膨大な感染者が発生して、そこそこの数の死亡者も出ています。

インフルは、例年1000万人が感染したと見込まれています。

実際に病院を受診した人は、その1/10以下になるので、ざっと100万人です。

入院した人は2万人、死亡者は、3000人です。 死亡者はコロナの2倍以上です。

 

コロナ重症者の悲惨な例が、大きく報道されているので、心理的な怖さは、実態より増幅されていると感じます。

感染者数・死亡者の数字で比較すると、コロナの脅威は、いくら大きく見積もっても、インフルエンザと同様と考えるのが妥当です。

 

もう一つの比較例として結核を取り上げます。

結核も、人から人へと空気感染しますので、コロナと似た側面があります。

結核は、年間2万人が発症しています。

しっかりとした治療薬がありますが、2000人が死亡しています。

皆さんは、結核とコロナ、どちらが怖いですか?

 

 

法的な取扱・規制(感染症法)

大規模な感染症に対しては、感染症法に基づく取扱・規制が国によって実施されます。

1/28に、初めて「指定感染症」という単語を聞いた人が、大多数でしょう。

この日、政府は、新コロナを指定感染症として、2類感染症相当とすることにしました。

結核と同じ扱いになったわけです。

感染確認されると強制的に入院させられ、社会から隔離されます。

強制的であるため費用は無料になります。

 

4月の感染急拡大の時には、隔離病棟が足りなくなり、ホテルや自宅待機という臨時措置で

凌がざるを得なくなりました。

感染症法の定めをきちんと実施するならば、ホテルや自宅待機というのは、国が義務を果たせていないことになります。

現実的には、軽症者が多かったので、むしろそれでよかったのだと思います。

重症者のみを入院・隔離して、軽症者は、インフルエンザのように自宅待機をして回復を待つというのが、現実的で合理的だと考えます。

 

第2波では、感染者は多いけれど、重症者は少なく、死亡者もわずかです。

そろそろ、規制を緩めて、インフルエンザと同等の5類感染症とする検討も始まっています。

しかし、政府はなかなか具体的なことを口に出しません。

社会は、自粛生活に、もうこれ以上は長く息が止めていられない限界に近づいています。

政治家たちには、社会を安定させるために、コロナの脅威を冷静に判断をして、思い切った政策変更をする勇気を持ってほしいと願っています。

 

 

治療法

治療薬は、ほぼないと言うのが結論です。

WHOは、最近の声明で、薬はない、今後もないと言い切っています。

新薬の開発は時間がかかるので、既存薬のなかで効果のありそうなものを探す試行錯誤を

始めました。 

検討された薬は、数十種類に上りましたが、少しでも効果が確認されたのは、わずか2種類でした。

レムデシビル: 中等症に対して、入院期間が15日から11日に短縮できた。

デキサメサゾン: 重症者に対して、30%の救命効果があった。

アビガン: 9月に入っても治験が続けられているが効果の有無は不明のままです。

(たぶん、うやむやのうちに治験が終わりそうです。)

レムデシビル・デキサメサゾンのどちらも、特効薬というほどのものではありません。

 

特殊な治療として、血漿抗体治療が試されています。

コロナから回復した人の血液から血漿という成分を取り出して薬として使うものです。

人の生の血液を使うので、未知のウイルスを患者さん側に感染させてしまうかもしれない

というリスクが伴います。

このリスクを冒してでも救わなければならない重症者のみが対象になります。

主流の治療にはなりません。

 

 

検査法

PCR検査、抗原検査、抗体検査が開発されました。

主力は、今でもPCR検査のみです。

抗原検査は、インフルエンザ検査のような簡便さがありますが、精度が低いので、補助的な検査という位置づけに留まっています。

抗体検査(血液)は、感染がどれぐらい広まっているかの調査に用いられます。

病気感染の早期発見には、役に立ちません。

 

 

ワクチン

治療薬がないという結論が出た今では、ワクチンによって集団免疫を獲得するのが、残された唯一の手段となりました。

こちらも開発には困難が伴うので通常は5〜10年はかかります。

幸いなことに、2つの条件が重なって、わずか半年で完成しつつあります。

7月末より、大規模な最終実験(第3相試験)が始まっています。

1万人以上に接種して、本当の安全性と有効性を確認する治験(実験)です。

この治験で、50%以上の有効性が確認できれば、ワクチンとして承認される見込みです。

結果がでるまで3カ月程度期間が必要ですので、早ければ10月末には、結論は明らかになります。

各国政府は、焦っているので、早期の承認をして、国民への接種を進めるでしょう。

早ければ、年末あるいは2021年早々に、ワクチン接種が始まります。

 

奇跡とも思われるワクチン早期開発が可能になったのには、2つの事情がありました。

  1. ウイルスの遺伝子情報を使った新アイデアのワクチンである。
  2. 政府が、巨額の資金を製薬会社に提供した。

 

今までは、ウイルスを直接に使ったワクチンが関発されてきました。

インフルエンザ、麻疹、風疹など、すべてがこのタイプです。

新ワクチンは、ウイルスの遺伝子情報を解析して、その一部分だけを使うという画期的な

方法が用いられました。

そのため早期開発が可能になりました。

人類史上初の遺伝子ワクチンの登場です。

 

製薬会社は、開発に失敗すると大きな経済的損失が見込まれるそうな案件には、あまり手を出しません。

ワクチンも開発リスクが高い分野です。

今回は、開発資金をほぼ政府が負担する形になっているので、製薬会社は失敗を気にせず研究に没頭できました。

これが開発を加速させたもう一つの理由です。

アメリカは、すでに3000億円以上の資金提供をしています。

 

ワクチンが開発されて実用になるには、3つの壁を乗り越えなくてはなりません。

開発の壁、時間の壁、人の心の壁の3つです。

開発と時間の壁、は研究者の努力と政府の努力で何とか突破でき、ワクチンはほぼ完成間近になりました。

実用化して感染収束するためには、「人の心の壁」が立ちはだかります。

これは、ワクチンを役立たせるかどうかは、皆さんの判断で決まるという問題です。

アメリカの調査では、ワクチンが完成しても、30%の人は接種しないと答えています。

 

ワクチンによる集団免疫を成立させて、感染収束を目指すならば、70〜80%の人が接種を受ける必要があります。

治験でワクチンの安全性・有効性が確かめられたとしても、初の遺伝子ワクチンということに不安が残ります。

高齢者、持病を抱えている人、妊婦、小児など、幅広く接種したときにどのようなことが起こるのかは、未知の部分として残ります。

勇気を奮って、国民全員が受け入れることができるでしょうか?

この「人の心の壁」が、低く、薄くなるように、今から心の準備を始めないといけません。

あと数か月で、ワクチンが手に入ります。

自分だけではなく、社会を守るためにも、積極的に接種をする必要があります。

日本人は、リスクをとても嫌う国民性があるようです。

この心の壁のために、ワクチン接種事業が挫折してしまうかもしれません。

そうなれば、何のためのワクチン開発だったのでしょうか?

まもなく、その答えが出ることになります。

 

 

11月からの医療危機

例年では、11月からは、インフルエンザの流行が始まります。

もし、コロナとインフルが同時に流行することになれば、大変なことになるのは、イメージできるでしょう。

この半年間の事情を踏まえると、小さな医療機関は、発熱患者を診ないでしょう。

院内感染を起こすと、強制休業になるので、自衛のため、発熱患者さんは、お断りとなります。

発熱した人は、コロナかインフルかわからないままに、コロナ発熱外来のあるところを受診せざるを得なくなります。

そこでは、多数の患者で溢れかえって、機能不全に陥ります。

再び、医療崩壊の危機が迫ります。

政府もこの医療危機は承知しています。

 

どうしたらいいのでしょうか?

ひとつの方法としては、新コロナをインフルと法律的には、同じ扱いにすることです。

コロナは強制措置が取られますが、インフルは自己判断に任されます。

コロナも、インフル同様に、重症者は入院するが、軽症者は自宅で療養する。

このようになれば、大小すべての医療機関が発熱患者さんを昨年のように診ることになるでしょう。

 

コロナの脅威の程度も、わかってきました。

政府が、コロナの取り使いについて、感染症法の2類から5類に指定替えをすることで

コロナとインフルが同じように取扱うことができます。

これならば、昨年と同様に発熱患者を例年どおりに診療できます。

医療機関も患者さんも、十分に慣れた方法で医療が続けられます。

マスコミでも、この話が、話題にのぼるようになってきています。

最近の政府関係者の発言を聞いていると、指定替えにはちゅうちょしているように見えます。

 

 

ウイルス干渉説(交代説)

11月からインフルエンザが流行してくるとコロナの自然終息が早まる希望があります。

2つの異なるウイルスが、同時に大流行することはなく、どちらか一方だけになるという説です。

 

実例を2つ上げます。

今年の1月上旬にインフルの患者が急減し、ほどなくして終息しました。

私は、その時は、とても不思議な年だと思っていました。何が起こったのかと?

ところが、2月から新コロナが発生して、瞬く間に日本で大流行になりました。

中国で発生した新コロナ(COVID19)は、12月には日本に入って来たと考えられます。

当時は、大勢の中国人が日本を訪れていました。

いっしょにウイルスを連れてきていたのでしょう。

1月にコロナが、インフルに取って代わったように見えます。

 

日本の夏の時期は、南半球は冬となりインフルの流行期です。

今年は、インフルは全く流行せず、コロナが大流行です。

ブラジルでは、500万人ものコロナ感染者が発生しています。

コロナがインフルを抑え込んでいます。

 

話を戻します。

今年11月にインフルが流行り始めれば、コロナが下火になるかもしれないという期待です。

逆に、コロナが続いて、インフルは流行しないかもしれません。

 

私は、毎年の脅威であったインフルが、コロナを駆逐してくれることを期待します。

そうなれば、敵であったインフルが、今年に限っては、コロナ退治を強い味方になります。

 

おわりに

12回に渡って発信したコロナ感染についての産業医通信の内容を再整理しました。

詳しくは、各回を読み直してください。

 

世界的に、新規発生者数は頭打ちになってきました。

このまま終息にいたるのか、まだまだ流行は続いてワクチンの出番になるのか、

見極めのタイミングが近づいています。

政府まかせ、製薬会社まかせの時期は、すぎました。

あなたはワクチンの接種を受けるのか?

政府は、現行の自由な社会活動を抑圧する法律的な規制をどうするのかに対して、国民の声に耳を傾けよと言わなくていいのか?

社会を守るには、感染抑止だけでは、逆に社会に対して大きな弊害があることに気づいてきました。

それぞれの人が、半年間の経験をもとに、どのような市民生活を取り戻したいのかを考えて、声を上げる時期になっています。

傍観者のままでいいのでしょうか?

私の記事が、それらを考えるための参考になればうれしく思います。